二つのデバイスがどちらも正しく動いていても、同じ夜の心拍変動(HRV)が違って表示されることがあります。リングが45 ms、時計が62 msと表示しても、どちらかが間違っているとは限りません。デバイスによって違うのは、報告する指標、夜のどの部分を測るか、センサーの位置、データの整え方です。
このレッスンでは、四つの理由を順に取り上げ、そのあとで、どんな比較なら公平かを示します。
| 理由 | 例 | 自分にとっての意味 |
|---|---|---|
| 指標 | 「ヘルスケア」AppはApple WatchのHRVをSDNNとして保存し、OuraはRMSSDを報告します | 数値が測っているものが違います |
| 時間帯 | 一晩の平均、深い睡眠のみ、眠りはじめの数時間 | 指標は同じでも、夜の切り取り方が違います |
| センサー | 胸部ストラップの心電図( ECG 心電図 皮膚に付けた電極で記録する、心臓の電気的な活動の記録。心電図に基づくRR間隔は、HRVを測るうえでの参照基準です。 心電図についてさらに詳しく )、または指や手首の光学センサー | 光学センサーの測定値のほうが、動きでずれやすくなります |
| 処理 | メーカーごとに、不良な拍の除去と平均のとり方が違います | 方法の大半は公開されていません |
理由1:指標が違う
レッスン6で見たとおり、RMSSDとSDNNは、同じ心拍を別の角度から表します。Appleのデベロッパー向けドキュメントによると、Apple WatchはHRVをSDNNで保存します。2025年の検証研究(Dialら, 2025)によると、Oura、WHOOP、Polar、GarminはRMSSDを報告します。使っているデバイスがこの一覧にない場合は、ヘルプページで指標を確認してください。
そのため、何よりも先に指標を確認してください。時計のSDNNとリングのRMSSDは、記録が完璧でも、一致することはめったにありません。詳しくは、Apple WatchのHRVが他機種と違うのはなぜ?をお読みください。
理由2:夜の切り取り方が違う
メーカーごとに、夜のどの部分を平均するかが違います。そのため、二つのデバイスがどちらも正確に測っていても、同じ夜のRMSSDが違って報告されることがあります。
各メーカー自身の説明によると、次のとおりです。
- Ouraは、一晩を通して取得した五分間のサンプルを平均します。
- WHOOPは、数値を徐波睡眠(深い睡眠)に重みづけします。WHOOP 2.0の検証研究では、徐波睡眠中に測定すると説明されており(Bellengerら, 2021)、WHOOP 4.0の数値について、WHOOPは、夜の最後の深い睡眠ステージに重みをかけた平均だと説明しています(Dialら, 2025)。
- Garmin(Fenix 6)は、睡眠の全期間にわたる五分間の区間を平均します(Dialら, 2025)。
- Polarは、Nightly Rechargeに眠りはじめのおよそ四時間を使います。この時間帯のほうが、一晩の平均より回復をよく反映するとしています。
- Apple Watchは、一晩の平均を一つ出すのではなく、HRVのサンプルを自動で個別に記録します。
深い睡眠の時間帯、一晩の平均、起きてからの短い測定は、三つの別の測定です。詳しくは、OuraとWHOOPでHRVが違うのはなぜ?と夜間と朝のHRV、どちらが役立つ?をお読みください。
理由3:センサーが違い、位置も違う
胸部ストラップは、心臓の電気信号である心電図(ECG)を記録します。この信号は、一拍ごとをくっきりと示します。リングや時計は、 光電式容積脈波 PPG 皮膚に光を当て、心拍ごとの血液の拍動を検出する光学的な方法。ほとんどの時計、リング、スマートフォンのカメラアプリが、これで心拍変動(HRV)を推定します。 PPGについてさらに詳しく (PPG)という光学センサーを使い、血液が皮膚に届いたときの脈波を捉えます。厳密には、PPGが測るのは心拍変動ではなく、 脈拍変動 脈拍変動(PRV) 脈拍と脈拍の間隔の変動を、時計、リング、スマートフォンのカメラが光学的に測ったもの。安静時は心拍変動(HRV)によく追従しますが、動いているときはずれていきます。 脈拍変動(PRV)についてさらに詳しく (PRV)です。
この二つを比べた研究のレビューでは、安静時には脈拍の測定値は十分に正確だとされていますが、短時間の変動をわずかに過大評価する研究が多くありました。動きや、ある種の精神的ストレスがあると一致度が下がり、その低下は役に立たないほど大きいことも多くありました。センサーの位置が違いを生むかどうかは、これらの研究では結論が出ませんでした(SchäferとVagedes, 2013)。詳しくは、手首のHRVは胸部ストラップと同じくらい正確?をお読みください。
理由4:データの整え方と平均のとり方が違う
どの記録にも、動いた瞬間、拾えなかった脈、余分な拍動といった、不良な拍が含まれます。それをどう見つけて取り除くか、数値を出すのにどれだけきれいなデータが必要か、結果をどう平均するかは、メーカーごとに決められています。こうした選択の大半は非公開です。二つのデバイスが同じ心拍を捉えていても、整え方が違うために、少し違う数値を出すことがあります。
差はどのくらいあるのか?
2025年の研究では、13人の健康な成人を延べ536夜にわたって追跡しました。参加者は、市販のデバイスと、基準となる胸部ストラップの心電計(Polar H10)を一緒に着けました。胸部ストラップの値は、一晩全体で平均されました。眠りはじめのおよそ四時間だけを使うPolarの時計については、胸部ストラップの同じ四時間の値が使われました。WHOOPは重みづけを再現できなかったので、一晩全体の平均が使われました(Dialら, 2025)。
| デバイス | 胸部ストラップとの一致度(CCC) | 平均誤差 |
|---|---|---|
| Oura Gen 4 | 0.99 | 6.0% |
| Oura Gen 3 | 0.97 | 7.2% |
| WHOOP 4.0 | 0.94 | 8.2% |
| Garmin Fenix 6 | 0.87 | 10.5% |
| Polar Grit X Pro | 0.82 | 16.3% |
一致相関係数(CCC)は0から1の値をとり、1が完全な一致を表します。平均誤差は平均絶対パーセント誤差(MAPE)で、各夜の値が胸部ストラップの値から平均してどれだけ離れていたかを表します。
これは一つの研究の平均です。手元のデバイスが、これより近く一致することも、離れていることもあります。より新しいモデルやソフトウェアでは、挙動が変わることもあります。
どのデバイスが正しいのか?
この研究では、各デバイスと胸部ストラップとの平均の差は小さく、約1〜5 msでした。完全に一致したデバイスはなく、その必要もありませんでした。推移を追うなら、デバイスが「正しい」とは、毎晩同じ方法で測っているということです。そうであれば、数値の上げ下げに意味があるからです。
どうすればよいか
- 推移を追うデバイスは一つに決めてください。 ベースラインと推移には、そのデバイスを使います。
- データを混ぜないでください。 二つのデバイスの数値を一つのグラフに混ぜると、本当はない上げ下げができてしまいます。
- 数値ではなく向きを比べてください。 両方のデバイスが同じ朝に下がり、同じ朝に上がっているなら、推移は一致しています。
- デバイスを替えたら、ベースラインをつくり直してください。 新しいデバイスの推移を読むのは、数週間おいてからにしてください。つくり方は、レッスン10で説明しています。
- 基準が欲しいなら、胸部ストラップを使ってください。 心電図方式の胸部ストラップと、朝の短い測定の組み合わせは、大半の人が実験室の測定にいちばん近づける方法です。
HRVチェッカー「自分のHRVは普通?」でも、一覧からデバイスを選ぶと、そのデバイスが何を測っているかを確認できます。各メーカーの詳細は、Oura・WHOOP・Garmin・AppleのHRVをご覧ください。
次はHRVを正しく測るにはです。