心拍変動(HRV)が遺伝によるのは一部ですが、その割合は大きなものです。24時間心拍モニターを着けた772人の双子ときょうだいを調べた研究では、遺伝的要因が、RMSSDの個人差の40〜48%、SDNNインデックスの個人差の35〜47%を説明しました。残りは年齢、体力、習慣、偶然によるもので、他の人との比較よりも、自分自身の推移からのほうが多くのことがわかるのは、このためです。
双子の研究でわかったこと
Kupperら(2004)は、オランダの健康な双子と、その双子ではないきょうだい、合わせて772人を対象に24時間心電図( ECG 心電図 皮膚に付けた電極で記録する、心臓の電気的な活動の記録。心電図に基づくRR間隔は、HRVを測るうえでの参照基準です。 心電図についてさらに詳しく )を記録し、一卵性双生児どうしの似方を、二卵性双生児やきょうだいどうしの似方と比べました。一卵性双生児が他の組より似ているほど、遺伝の割合は大きくなります。 SDNNインデックス SDNNインデックス 24時間記録の5分ごとの区間で求めたSDNNの平均で、単位はミリ秒です。各区間の中の変動は残り、区間のあいだのゆっくりしたドリフトは除かれます。 SDNNインデックスについてさらに詳しく (記録全体にわたる5分ごとのSDNN値の平均)では、遺伝子が個人差の35〜47%を占め、その値は時間帯(朝、午後、夕方、夜間)によって異なりました。RMSSDでは40〜48%でした。著者らは、日常生活下で記録したHRVは遺伝性が高く、心血管リスクの遺伝研究に使えるほどだと結論づけています。
40〜48%という割合は、百人を並べたとすると、そのRMSSDの散らばりのおよそ半分が生まれ持った遺伝子に、残りの半分がそれ以外のすべてに由来する、という意味です。
どの遺伝子で、どれだけ説明できるか
遺伝子を特定するのは、遺伝の割合の合計を測るより難しい作業です。Nolteら(2017)は、ヨーロッパ系の最大53,174人を対象に、三つのHRV指標についてゲノムワイド研究を行い、ゲノムの八つの領域で17個の有意な変異を見つけました。そのうちいくつかは、心臓のペースメーカーである洞房結節で働く遺伝子にありました。それでも、これらの変異から作ったスコアが説明できたのは、HRVのばらつきの0.9〜2.6%にすぎません。遺伝の割合の大半は、まだ特定されていない多数の小さな効果に分散しており、これは身長や血圧でも同じです。この研究では、HRV、心拍数、血圧の間に遺伝的な重なりも見つかりました。
残りの半分
遺伝以外の半分でもっとも大きいのは、年齢です。Vossら(2015)は、5分間の安静時心電図を記録した健康な成人1,906人で、RMSSDの中央値が25〜34歳で36〜38 ms、65〜74歳で17 msであることを示しました。体力、睡眠、飲酒、病気、ストレスは、遺伝子と年齢が決める範囲のなかで値を動かします。HRVに影響するもの:睡眠、飲酒、ストレスほかのガイドでは、それらを重要度順に並べています。
測定できる要因を合わせると、どれだけ説明できるでしょうか。スマートフォンのアプリで朝の測定を行った28,175人を調べたAltiniとPlews(2021)によると、年齢、性別、身体活動の水準、体格指数(BMI)を合わせて説明できたのは、人によるRMSSDの違いの約15%でした。残りの散らばりがあるために、より高いHRVは全員にとって現実的な目標ではなく、この数値は一人の人のなかでの変化を追うほうが役立つ、と著者らは論じています。
自分の数値にとっての意味
- 他の人の数値と並べて低くても、それが遺伝的に自分にとっての普通であることがあります。HRVが低いとはどういうこと?では、他の人と比べて低いのか、自分にとって低いのかを分けて説明しています。
- 自分のなかでの変化は、やはり実際のものです。遺伝子が水準を決め、その週の睡眠、トレーニング、飲酒がそれを動かします。その動きの読み方は、レッスンHRVのベースラインをつくり、推移を読むで紹介しています。
- 体力をつけることは役立ちますが、限界があります。体力がつくとHRVは上がる?速さはどれくらい?で、その大きさを紹介しています。
医師に相談するとき
HRVでは、遺伝性の心臓の病気についてはわかりません。家族に心臓病、突然死、失神を起こした人がいる場合は、HRVの値にかかわらず、検査について医師に相談してください。