HRVと月経周期:時期ごとの変化

自然な月経周期のある人の多くでは、心拍変動(HRV)は周期の前半に高く、プロゲステロンが増える排卵後に低くなります。変化の大きさは人によって大きく異なり、研究もまだ小規模です。

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要点

  • 37件の研究を統合すると、HRVは排卵前の卵胞期より、排卵後の黄体期のほうが低い傾向にありました。
  • 同じ人の中では、プロゲステロンが普段より高いことと、HRVが普段より低いことが関連しており、エストラジオールには明確な関連がみられませんでした。
  • もっとも明確な低下は、月経期や卵胞期後半から次の月経前の数日にかけてでしたが、各時期を測定した研究は多くありません。
  • パターンには個人差があり、研究の対象は自然な月経周期のある人だけでした。
  • HRVは先週の値ではなく、以前の周期の同じ時期と比べてください。

自然な月経周期のある人では、心拍変動(HRV)は周期の前半に高く、排卵後の後半に低くなる傾向があります。この変化はプロゲステロンと関連しており、人によって大きく異なります。何か問題があるサインではなく、正常なパターンです。

周期の中でHRVが変わる理由

RMSSDや高周波パワーなど、短時間のHRV指標は、主に副交感神経の働きを反映します。副交感神経は迷走神経を通じて心拍を遅くし、拍と拍の間隔が変動できるようにします(ShafferとGinsberg, 2017)。研究者はこれを、心臓の迷走神経活動と呼ぶことがよくあります(Schmalenbergerら, 2019)。周期とともに増減するホルモンが、この活動を動かしているようです。

これまでで最も明確な関連は、排卵後に増えるホルモンであるプロゲステロンとのものです。ドイツと米国の研究チームによる二つの研究では、同じ人でホルモンとHRVを繰り返し測定しました。一つは40人を毎週、四週間にわたって測定し、もう一つは50人を排卵検査で確認した三つの時期に測定しました(Schmalenbergerら, 2020)。どちらの研究でも、プロゲステロンがその人の普段の水準より高いとき、HRVは普段より低い傾向がありました。エストロゲンの主な形であるエストラジオールには、明確な影響はみられませんでした。

黄体期には、心拍数と体温もわずかに高くなります。健康な女性26人がOuraリングを着けて一周期を通して測定した研究では、睡眠中の心拍数と皮膚温が、月経中や排卵の前後より、黄体期の中期から後期のほうが高くなっていました(Alzuetaら, 2022)。RMSSDは黄体期に低い傾向がありましたが、その差はそれほどはっきりしていませんでした。

時期ごとの変化

下の表は、複数の研究で報告されたパターンをまとめたものです。日数は周期ごと、人ごとに異なるため、決まった日付ではなく、その時期に起きることで説明しています。

時期起きること研究で報告されたHRV
月経期周期の初めの出血のある日月経前の数日より高い
卵胞期月経から排卵まで。エストラジオールが増える全体として黄体期より高く、月経前の数日より高い
排卵期周期の中ごろに卵子が放出される判断できるだけの研究がない
黄体期の前半から中期排卵後。プロゲステロンが増える2020年のある研究では他の時期より低い。研究を統合した比較では明確でない
月経前(黄体期後半)次の月経の直前の数日月経中や卵胞期後半より低い

最大規模のまとめは、2019年のメタアナリシスです。自然な月経周期のある1,004人を対象とした37件の研究を合わせています(Schmalenbergerら, 2019)。心臓の迷走神経活動は、卵胞期から黄体期にかけて有意に低下していました。さらに細かく比べると、月経期から月経前の数日、および卵胞期の中期〜後期から月経前の数日への低下はより大きかったものの、根拠はいずれもわずか五〜八件の研究です。ほかの時期どうしの比較は統計的に明確ではなく、その多くはわずか一〜四件の研究に基づくものでした。2020年の研究では、プロゲステロンが高い黄体期の中期に、測定した他の時期よりHRVが低くなっていました。

米国の小規模な研究では、女性13人の安静時の心電図を周期の五つの時点で記録しました(Tenanら, 2014)。周期が進むにつれて心拍数と呼吸数が上がり、HRVは下がりました。研究者らが呼吸の変化を考慮したあとでも、この低下は副交感神経が後退した結果のように見えました。

さらに詳しく 変化はどのくらい大きいのか

メタアナリシスは効果量(Cohenのd)を報告しています。これは、変化の大きさを、値が普通どのくらいばらつくかと比べるものです。0.2前後は小さい、0.5は中程度、0.8は大きいとされることが多い目安です。

  • 卵胞期から黄体期:d = −0.39(37件の研究、1,004人)。小〜中程度の低下です。
  • 月経期から月経前:d = −1.17(5件の研究、200人)。
  • 卵胞期の中期〜後期から月経前:d = −1.32(8件の研究、280人)。

後の二つは大きく見えますが、信頼区間が広く(たとえば月経期から月経前では−0.17〜−2.18)、実際の大きさはずっと小さい可能性があります。これらは集団の平均です。自分のRMSSDが何ミリ秒動くかは、これではわかりません。

月経前の低下は、デバイスの誤作動?

通常は違います。月経前の数日に測定値が低くなるのは、研究のなかでもっとも明確なパターンです。研究を統合すると、HRVは月経前の数日のほうが、月経中や卵胞期後半より低くなっていました(Schmalenbergerら, 2019)。このレビューでは、低下を一つのホルモンに結びつけることはできませんでしたが、著者らはその週のプロゲステロンの低下を、可能性の高い仕組みとして挙げています。Ouraの研究でも、同じ時期に睡眠中の心拍数と皮膚温が高くなっていました(Alzuetaら, 2022)。つまり、月経前の夜にリングや時計がHRVの低下、速い心拍、高い体温を示していれば、それは体の状態を伝えているのであって、故障ではありません。

一部のアプリは、この低下を「回復不良」という表示や低いレディネススコアに変えてしまいます。スコアが周期のどこにいるかを知らないためです。誤っているのは測定ではなく、その表示です。月経の日を記録し、その週を前の周期の同じ時期と比べてください。

自然な月経周期の研究が扱っていない内容は、関連する二つのページで説明しています。ホルモン避妊法でHRVは変わる?と、閉経周辺期と閉経後のHRVです。

個人差

全員が同じパターンを示すわけではなく、エビデンスにははっきりした限界があります。

  • 個人差。 2020年の研究の著者らは、一部の人のHRVが、ほかの人よりプロゲステロンに強く反応する理由を調べる研究が必要だとしています。
  • 小規模な研究。 ここで紹介した個別の研究の対象は13〜50人で、大半は一周期だけの追跡でした。
  • 自然な月経周期のみ。 メタアナリシスの対象は、自然な月経周期のある閉経前の人だけでした。ホルモン避妊法、妊娠、閉経周辺期、閉経については、これらの結果からはほとんど言えません。

周期を通じて自分のデータを読むには

  1. 周期をHRVと並べて記録する。 多くのアプリでは、月経の日を記録できます。記録がないと、黄体期の低下が回復不良の連続のように見えることがあります。
  2. 同じ条件どうしで比べる。 今週のHRVは、前の週ではなく、前の周期の同じ時期と比べます。ベースラインについては、レッスンHRVのベースラインをつくり、推移を読むで詳しく説明しています。
  3. 二、三周期は見る。 一周期だけでは、自分のパターンはつかめません。
  4. 心拍数と体温も見る。 排卵後に夜間の心拍数と皮膚温が高くなるのは、よくあるパターンに当てはまります。
  5. 他の人と比べない。 年齢別の目安は、せいぜいおおまかな手がかりです。年齢別の標準的なHRV:範囲と読み方をご覧ください。数か月にわたる自分の推移のほうが参考になります。

HRV全般が大きく動くと感じる場合は、HRVが日ごとに大きく変わるのはなぜ?で、そのほかのよくある原因を説明しています。

医師に相談するとき

HRVからは、ホルモンや妊娠のしやすさについてはわかりません。周期の異常を見つけることもできません。月経が不規則になった、妊娠していないのに止まった、出血量がとても多い、強い痛みがある、月経と月経の間に出血があるといった場合は、医師に相談してください。気分の落ち込みや不安といった月経前の症状で生活に支障が出ている場合も、医師に相談してください。HRVがどうであれ、受診の理由になるのは症状です。

よくある質問

月経前にHRVが下がるのはなぜですか?

自然な月経周期のある人の研究を統合すると、HRVは月経前の数日のほうが、月経中や卵胞期後半より低くなっていました。低下にもっとも関連が深いホルモンは、排卵後に増えるプロゲステロンです。よくみられるパターンで、それだけで回復不足を示すものではありません。

ホルモン避妊法でこのパターンは変わりますか?

ここで紹介した研究の対象は、自然な月経周期のある人だけでした。ピルを使う人を調べた小規模な研究では、有効成分を含む週と含まない週でHRVに差はみられず、月ごとの揺れは小さくなる可能性があります。ホルモン避妊法とHRVについては、別の質問ページをご覧ください。

出典

  1. A Systematic Review and Meta-Analysis of Within-Person Changes in Cardiac Vagal Activity across the Menstrual Cycle: Implications for Female Health and Future Studies Journal of Clinical Medicine, 2019
  2. Menstrual Cycle Changes in Vagally-Mediated Heart Rate Variability are Associated with Progesterone: Evidence from Two Within-Person Studies Journal of Clinical Medicine, 2020
  3. Changes in resting heart rate variability across the menstrual cycle Psychophysiology, 2014
  4. Tracking Sleep, Temperature, Heart Rate, and Daily Symptoms Across the Menstrual Cycle with the Oura Ring in Healthy Women International Journal of Women's Health, 2022
  5. An overview of heart rate variability metrics and norms Frontiers in Public Health, 2017