きつい運動のあとにHRVが低いのは、運動で神経系が「ストレス」側に傾き、落ち着かせる側が主導権を取り戻すまでに時間がかかるからです。翌朝の低下は正常で、通常は運動の強さと体力に応じて、一、二日のうちに収まります。
きつい運動のあと、体の中で起きていること
運動中は、 交感神経系 交感神経系 自律神経系のうち「闘争・逃走反応」を担う系統です。心臓を速く、強く拍動させますが、作用が遅すぎて、拍ごとの心拍変動(HRV)を左右することはできません。 交感神経系についてさらに詳しく (「アクセル」側)が強まり、 副交感神経 副交感神経系 自律神経系の「休息と消化」の枝。おもに迷走神経を通して心拍を遅くし、心拍変動(HRV)の拍ごとの変動の大半を生み出します。 副交感神経系についてさらに詳しく (「休息」側)が弱まって、心拍数が上がります。HRVは主にこの休息側を反映するため、運動中は下がります。
運動をやめても、休息側はすぐには戻りません。研究者はこの戻りを「副交感神経の再活性化」と呼んでいます。最初の一時間ほどは、筋肉や血液に酸がたまることなどに左右されます。そのあとの一、二日は、体がバランスを取り戻すなかでの、血液量や体液の変化と関連していると考えられます。この過程が終わるまで、安静時のHRVは普段より低いままです。
低下は通常どのくらい続くか
2013年のレビューは、ランニングや自転車などの有酸素運動のあとのアスリートと健康な成人を調べた研究を統合しました。心臓の神経性の調節が完全に回復するまでにかかった時間は、次のとおりでした。
| 運動 | HRVが元に戻るまでの一般的な時間 |
|---|---|
| 低強度(軽い) | 最大24時間 |
| 閾値強度(きついが続けられる) | 24〜48時間 |
| 高強度(インターバル、レース) | 48時間以上 |
同じレビューでは、有酸素の体力が高い人ほど早く回復していました。運動の長さは、強度ほど影響しないようでしたが、この点のデータは限られていました。筋力トレーニングの研究もずっと少ないため、これらの時間は持久系の運動にいちばん当てはまります。
日常のデータでも、規模は小さいものの同じパターンが見られます。毎朝起床後にスマートフォンのアプリで短時間の測定をした28,175人の研究では、中程度または強いトレーニングをした日のあとは、RMSSDが平均で3%低くなっていました。休息日や軽い日のあとは、1.6%高くなっていました。これは多くの人と多くの日の平均なので、自分の低下はもっと大きいことも、小さいこともあります。
低下が予想より大きくなることがある理由
運動が単独で働くことはまれです。HRVを下げるほかの要因が、運動の影響に上乗せされることがあります。
- 睡眠不足。 ある研究では、一晩3時間の睡眠を三晩続けた成人15人で、朝のRMSSDが低くなっていました。
- 飲酒。 上のアプリの研究では、飲酒量が多かったあとのRMSSDが約12%低くなっていました。
- 病気。 同じ研究では、病気のときのRMSSDが約10%低くなっていました。
- きついトレーニングの期間。 アスリートの心拍モニタリングに関するレビューによると、重いトレーニングを重ねる期間はHRVを下げやすく、中程度の負荷はHRVを上げやすい傾向があります。
HRVはこれらのすべてに反応します。アプリの研究の著者らは、HRVをストレスの敏感だが特異的ではない指標と呼んでいます。何かが体に負荷をかけていることはわかりますが、それが何かまではわかりません。ここで役立つのが安静時心拍数です。安静時心拍数は大きめの負荷でしか上がらない傾向があるため、HRVの低下に加えて安静時心拍数がはっきり高ければ、より強い信号になります。二つを合わせて読む方法は、HRVと安静時心拍数、どちらが重要?のページで説明しています。
自分の数値でどうするか
- 起こるものと考える。 きつい運動の翌朝に測定値が低いのは、正常な回復の一部です。
- 自分の範囲と比べる。 低い日が一日あっても、わかることは多くありません。7日間の平均がまだ普段の範囲に収まっているかを見てください。その範囲の決め方は、レッスンのHRVのベースラインをつくり、推移を読むで確認できます。
- 戻り方を見る。 一、二日でHRVが元に戻れば、回復は順調です。トレーニングを続けているのに数日間低いままなら、回復できる以上の負荷を重ねているのかもしれません。
- 状況を記録する。 何をしたか、どれだけ眠ったか、飲酒したかを書き留めてください。数週間たつと、自分の体が普段どう反応するかが見えてきます。
翌日またトレーニングするかどうかは、別の問題です。その判断は、HRVが低いとき、トレーニングすべき?のページが扱っています。数週間単位でトレーニングを計画するためにHRVをどう使うかは、トレーニングのページが扱っています。
医師に相談するとき
運動後の低下だけなら、医学的な心配はありません。運動中や運動後に、胸の痛み、失神、速い心拍や不規則な心拍、いつもと違う息切れがある場合は、医師に相談してください。休んだあとでもHRVが普段の範囲を大きく下回ったままで、体調も悪い状態が長く続く場合も同様です。HRVでは何も診断できませんが、医師なら何が起きているかを調べられます。