コーヒーで心拍変動(HRV)が確実に下がるわけではありません。管理された研究では、通常の量のカフェインはHRVを変えないか、わずかに上げました。数値により大きく影響するのは、夕方以降のカフェインが睡眠に及ぼす作用です。
カフェインが心臓のリズムに及ぼす作用
カフェインは刺激物なので、心臓を「 闘争・逃走反応 交感神経系 自律神経系のうち「闘争・逃走反応」を担う系統です。心臓を速く、強く拍動させますが、作用が遅すぎて、拍ごとの心拍変動(HRV)を左右することはできません。 交感神経系についてさらに詳しく 」の状態に押しやってHRVを下げると予想するかもしれません。以下の研究の大半では、そうなりませんでした。
- ふだんからコーヒーを飲む人では変化なし。 ドイツで、毎日カフェインをとっている若い男性30人が、別々の日に100 mg、200 mg、またはプラセボを飲む二重盲検の研究が行われました(Rauhら, 2006)。そのあとの90分間、三つの条件の間でHRVに差はありませんでした。
- ある研究では小さな上昇。 日本で、健康なボランティア10人が、カフェイン240 mgを含む飲み物または対照の飲み物をとりました(Hibinoら, 1997)。副交感神経に関わる高周波のHRVは、カフェインのあと短時間上がり、30分の時点では対照より高くなりました。二つ目の試験では、カフェインを加えたデカフェコーヒーのほうが、ふつうのデカフェよりこれを大きく上げました。
- 運動のあとも変化なし。 2024年のレビューは、運動の前後にカフェインをとった活動的な成人の七件の試験を統合しました。量は体重1 kgあたり2.1〜6.0 mgでした(Almeidaら, 2024)。運動後のRMSSDと高周波のHRVの回復は、カフェインでもプラセボでも同じでした。
睡眠中のカフェイン
では、夜になっても体内に残っているカフェインはどうでしょうか。スイスで、健康な若い男性21人が、いつもの就寝時刻に遅延放出型のカフェイン160 mgまたはプラセボを飲み、その4.5時間後から4時間眠りました。睡眠は詳しく記録されました(Baurら, 2024)。血中のカフェイン濃度は、人によって大きく違いました。濃度が高いほど、深い睡眠の脳活動は下がりましたが、心拍数も平均で1分あたり約3拍下がり、ノンレム睡眠中の高周波のHRVは上がりました。心臓への影響は、ある血中濃度(1リットルあたり約4〜5マイクロモル)を超えたときだけ現れ、そこまで達した人もいれば、達しなかった人もいました。
このように、カフェインは深い睡眠の脳波を弱めながら、心臓のリズムを副交感神経の側へ少し動かすことがあります。夜間のHRVの数値一つでは、両方は示せません。HRVだけでは、よく眠れたかどうかの目安として不十分な理由の一つは、ここにあります。
影響が大きいのは睡眠の減少
カフェインのもっともはっきりした影響は、睡眠そのものに現れます。米国の研究では、健康な成人12人が、就寝時、3時間前、6時間前のいずれかに、カフェイン400 mgまたはプラセボをとりました(Drakeら, 2013)。参加者は、ヘッドバンド型の睡眠モニターを着けて、自宅で眠りました。6時間前にとった場合でも、モニター上では、カフェインによって睡眠が一時間以上減りました。6時間前の条件では、睡眠日誌に書かれた減少は小さく、統計的に有意ではありませんでした。
睡眠が短いとHRVは下がる傾向があります。HRVと睡眠で扱っているとおりです。そのため、遅い時間のコーヒーは、カフェインそのものがHRVを下げなくても、間接的に一晩の数値を下げることがあります。
就寝の何時間前からカフェインをやめるか
2023年のメタアナリシスは、24件の研究を統合して、そのやめどきを数値で示しました(Gardinerら, 2023)。全体で、カフェインは総睡眠時間を約45分、睡眠効率を7%減らし、寝つくまでの時間を約9分、夜間の覚醒を約12分増やし、深い睡眠約11分を浅い睡眠に置き換えました。著者らは、量とタイミングのデータから、総睡眠時間を減らさないために、各量をいつまでにやめるべきかを算出しました。
| 量 | やめる時期(就寝の何時間前まで) |
|---|---|
| コーヒー1杯(250 mlあたり107 mg) | 少なくとも8.8時間前 |
| 標準的なプレワークアウト一回分(217.5 mg) | 少なくとも13.2時間前 |
就寝が午後11時なら、コーヒーは午後2時ごろまで、プレワークアウトは午前10時ごろまでです。これらの数値は平均です。カフェインを代謝する速さは人によって大きく違うため、自分のタグから、自分の線引きがどこかがわかります。
さらに詳しく カフェイン研究の限界
上の研究は規模が小さいものです。多くは健康な若い成人を対象としていて、二つは男性だけでした。ドイツの研究は、すでに毎日カフェインをとっている人だけを対象にしたため、ほとんどとらない人では反応が違うかもしれません。大半の研究は、一回の摂取のあとの一、二時間のHRVを測ったものです。ふだんどおり何週間も飲み続ける人を追った研究はありません。
スイスの睡眠の研究では、睡眠中の血中にカフェインがあるように、遅延放出型を使いました。夜になっても体内に残っているカフェインについてはわかりますが、実験室で、睡眠の時間も短い設定でした。
カフェインに注目した自分のデータの読み方
- 習慣を同じにする。 毎朝短い測定をするなら、習慣の中の同じタイミングで測ってください。コーヒーの前か、飲んで一定時間後のどちらかです。そのほかの点は、レッスンのHRVを正しく測るにはで扱っています。
- 遅い時間のカフェインを記録する。 正午以降のコーヒー、紅茶、エナジードリンク、プレワークアウトを記録してください。Drakeらの研究では、就寝6時間前の摂取でも睡眠が減ったので、午後のカフェインは記録しておいたほうがよいでしょう。数週間たったら、そうした夜をベースラインと比べてください。
- 睡眠のデータも確認する。 遅い時間にカフェインをとった日が、睡眠の短さとHRVの低さと重なるなら、関連しているのは睡眠不足のほうである可能性が高いと考えられます。
- ストレスと切り分ける。 忙しくストレスの多い日は、コーヒーも増えがちです。そうした日にHRVが下がるなら、ストレスが一因かもしれません。
- 推移を見る。 午後にエスプレッソを飲んだあとの低い夜が一回あっても、パターンではありません。数値が大きく揺れるなら、HRVが日ごとに大きく変わるのはなぜ?のページを参照してください。