lnRMSSD

別名:ln RMSSD, ln(RMSSD), RMSSDの対数, RMSSDの自然対数

RMSSDの自然対数で、単位はありません。対数をとるとRMSSDの値の散らばりが整い、日ごとの変化を比べたり分析したりしやすくなります。

lnRMSSD=ln⁡(RMSSD)\mathrm{lnRMSSD} = \ln\left(\mathrm{RMSSD}\right)

lnRMSSDは、RMSSDの自然対数です。それ自体の単位はありませんが、後ろに「ms」を付けて書く人も多くいます。

この指標がある理由

RMSSDの値は偏った分布をします。安静時の測定値の多くは中ほどの帯に集まりますが、ごく高い値も少しあり、高い値が尺度を引き伸ばすため、20 msでの変化は、80 msでの同じ割合の変化と並べると小さく見えます。よく使われる統計の検定は、値が平均の両側に均等に散らばると仮定しますが、RMSSDの生の値はそうなっていません。Labordeらの2017年のガイドラインは、正規分布しない心拍変動(HRV)の値は対数変換するよう勧めています。Plewsらはエリート選手のlnRMSSDを追跡しました。対数の尺度では、同じ割合の変化が同じ大きさの段差になります。

計算式

lnRMSSD=ln⁡(RMSSD)\mathrm{lnRMSSD} = \ln\left(\mathrm{RMSSD}\right)

ミリ秒で表したRMSSDの自然対数をとります。電卓の「ln」で、底はee(約2.718)です。対数は掛け算を足し算に変えるので、RMSSDが25%上がると、元の値にかかわらず、lnRMSSDには必ずln⁡(1.25)≈0.22\ln(1.25) \approx 0.22が加わります。元に戻すには、eeのべき乗にします。e3.69≈40e^{3.69} \approx 40 msです。

計算例

lnRMSSDをステップごとに計算

10拍分、すべての数値を表示

10個の間隔(ms、300〜2000)

この10個の間隔のlnRMSSDは3.29です。

ステップ 6 /6

  1. ステップ1/6 間隔を確認する

    1拍目880 ms
    2拍目826 ms
    3拍目812 ms
    4拍目823 ms
    5拍目848 ms
    6拍目877 ms
    7拍目880 ms
    8拍目866 ms
    9拍目828 ms
    10拍目815 ms

    11拍の間の10個の間隔(ミリ秒)です。

  2. ステップ2/6 次の間隔から、その前の間隔を引く

    2拍目 − 1拍目−54 ms
    3拍目 − 2拍目−14 ms
    4拍目 − 3拍目+11 ms
    5拍目 − 4拍目+25 ms
    6拍目 − 5拍目+29 ms
    7拍目 − 6拍目+3 ms
    8拍目 − 7拍目−14 ms
    9拍目 − 8拍目−38 ms
    10拍目 − 9拍目−13 ms

    プラスは、その拍で心拍がゆっくりになったこと、マイナスは速くなったことを表します。

  3. ステップ3/6 各差を二乗する

    差12916
    差2196
    差3121
    差4625
    差5841
    差69
    差7196
    差81444
    差9169
    合計6517

    二乗すると値がすべて正になり、大きな変化の重みが増します。

  4. ステップ4/6 二乗した値を平均する

    6517 ÷ 9724.11
  5. ステップ5/6 平方根を取る

    √724.1126.9 ms
  6. ステップ6/6 自然対数を取る

    ln(26.9)3.29

    対数を取ると、大きな値は縮み、小さな値は広がるため、日ごとの変化がどの水準でも同じ大きさに見えます。

    lnRMSSD 3.29

JavaScriptをオンにすると、ステップが1つずつ表示され、拍の値を変更できます。

教材用の記録の10拍から、lnRMSSDを1ステップずつ計算します。どれか1拍を変えると、すべてのステップが更新されます。

ミリ秒で表した10個の心拍間隔が、編集できる形で1行に並び、その下にlnRMSSDの計算が番号付きのステップで続きます。間隔を確認する; 次の間隔から、その前の間隔を引く; 各差を二乗する; 二乗した値を平均する; 平方根を取る; 自然対数を取る。最後のステップでは、lnRMSSDは3.29です。「戻る」「次へ」ボタンでステップを移動できます。

教材用の記録の十拍からは、RMSSDが26.9 msになるので、lnRMSSDはln(26.9) = 3.29です。下では、同じ二回の+25%の変化を、線形の軸と対数の軸で描いています。変換ツールでは、どのRMSSDでも対数に変換でき、その逆もできます。

なぜ対数なのか

同じ+25%を2回

自分の値
40 ms
lnRMSSD
3.69

線形の軸では、20から25 msへの上昇は短く、80から100 msへの上昇は長く見えますが、どちらも+25%です。高い値の側に目盛りが引き伸ばされるため、20 ms付近の推移は平坦に見えます。

JavaScriptをオンにすると、軸のスイッチ、スライダー、換算が使えます。

RMSSDが25%上がる例を2つ示しています。20から25 msへの上昇と、80から100 msへの上昇です。線形の軸では、2つ目のほうが4倍大きく見えます。対数の軸では同じ長さになります。日ごとの推移をlnRMSSDで追うのは、このためです。マーカーを動かして自分の値を両方の目盛りで見たり、下でmsとlnを換算したりしてみてください。

10〜160 msの横軸に10、20、40、80、160の目盛りがあり、20から25 msへの上昇と80から100 msへの上昇を示す2本の矢印と、自分の値のマーカーがあります。スイッチで、軸を線形から対数に切り替えられます。線形の軸では2本の矢印の長さが違い、対数の軸では同じになります。スライダーでマーカーの値を設定でき、表示欄にその自然対数が表示されます。連動する2つの数値欄で、ミリ秒とlnを相互に換算できます。

何で変わるか

RMSSDを動かすものと、まったく同じです。呼吸、 迷走神経活動 迷走神経トーン 心臓をゆっくりにする、迷走神経の持続的な働きかけ。通常は、RMSSDやHFパワーなどのHRV指標から推定します。 迷走神経トーンについてさらに詳しく 、心拍数、睡眠、アルコール、病気、トレーニング負荷です。変わるのは尺度だけです。lnRMSSDが0.3上がったなら、元が20 msでも80 msでも、RMSSDは約三分の一上がっています。

誤解しやすい場面

対数は数値を詰めるので、小さな差が見た目より重要になります。3.4と3.7は、RMSSDでは35%の差です。アプリのなかには、lnRMSSDを0〜100のスコアに換算するものがありますが、そのスコアはlnRMSSDとも、RMSSDとも、ほかのアプリのスコアとも比べられません。また、対数をとってもアーチファクトの影響は消えません。RMSSDを二倍にする期外収縮は、lnRMSSDにln(2)、約0.69を加えます。

どこで目にするか

スポーツ科学の論文はlnRMSSDを、たいてい7日間の移動平均と、その日ごとの変動係数(CV)とともに報告します。Plewsらは2012年に、二人のエリートのトライアスリートを追いました。非機能的オーバーリーチングの状態になった一人では、移動平均と変動がどちらも下がり、もう一人では安定していました。二人だけなので、決まりというより一例です。Kubios HRVは同じ考え方で、各スペクトル帯域のパワーの対数を「Absolute power (log)」として示します。レッスンRMSSD、SDNN、lnRMSSDの解説で、変換を順を追って示しています。HRVのベースラインをつくるでは、移動平均の使い方を見ます。

出典

  1. Heart rate variability and cardiac vagal tone in psychophysiological research: recommendations for experiment planning, data analysis, and data reporting Frontiers in Psychology, 2017
  2. Heart rate variability in elite triathletes, is variation in variability the key to effective training? A case comparison European Journal of Applied Physiology, 2012
  3. Training adaptation and heart rate variability in elite endurance athletes: opening the door to effective monitoring Sports Medicine, 2013

用語集の一覧

HRV指標の一覧