LF/HF比

別名:LF/HF, LF:HF比, 交感神経・迷走神経のバランス

LFパワーをHFパワーで割った値で、単位はありません。交感神経と副交感神経のバランスを示す目安として提案されましたが、研究ではそれを確実に測れないことが示されています。

単位:単位なし(比)

LFHF=∫0.040.15P(f) df∫0.150.40P(f) df\frac{\mathrm{LF}}{\mathrm{HF}} = \frac{\int_{0.04}^{0.15} P(f)\,\mathrm{d}f}{\int_{0.15}^{0.40} P(f)\,\mathrm{d}f}

LF LFパワー 心拍間隔の分散のうち0.04〜0.15 Hzの帯域に入る部分で、単位はms²。7〜25秒ごとに繰り返すリズムです。かつては交感神経の活動と読まれましたが、現在は異論があります。 LFパワーについてさらに詳しく /HF比は、LF(低周波)パワーをHF(高周波)パワーで割った値です。単位はありません。

この指標がある理由

考え方はすっきりしていました。LFパワーが交感神経(「 闘争・逃走反応 交感神経系 自律神経系のうち「闘争・逃走反応」を担う系統です。心臓を速く、強く拍動させますが、作用が遅すぎて、拍ごとの心拍変動(HRV)を左右することはできません。 交感神経系についてさらに詳しく 」にかかわる神経)から、HFパワーが副交感神経(「 休息と消化 副交感神経系 自律神経系の「休息と消化」の枝。おもに迷走神経を通して心拍を遅くし、心拍変動(HRV)の拍ごとの変動の大半を生み出します。 副交感神経系についてさらに詳しく 」の神経)から生じるなら、一方をもう一方で割れば、どちらが優勢かがわかります。比が高ければストレス、低ければ落ち着いた状態という読み方です。「交感神経・迷走神経のバランス」という言い方はこの考えから来ています。1996年の欧州心臓病学会と北米ペーシング・電気生理学会のタスクフォース(Task Force)も、LF/HFを標準的な周波数領域の指標に挙げ、定常状態での仰臥位5分間の記録の概算の正常値の表に1.5〜2.0を載せました。

この前提の前半は成り立ちません。Goldsteinらは2011年に、LFパワーは心臓の交感神経トーンではなく、圧受容器反射の機能の指標だと結論しました。Billmanの2013年のレビューは、副交感神経を遮断するとLFピークが少なくとも半分に減ることを挙げ、健康な人でも病気の人でも、この比は交感神経・迷走神経のバランスを正確に数値化できないと結論しています。ShafferとGinsbergは、管理された条件でのみ、そのバランスを推定できる可能性があると付け加えています。

計算式

LFHF=∫0.040.15P(f) df∫0.150.40P(f) df\frac{\mathrm{LF}}{\mathrm{HF}} = \frac{\int_{0.04}^{0.15} P(f)\,\mathrm{d}f}{\int_{0.15}^{0.40} P(f)\,\mathrm{d}f}

0.04〜0.15 Hzの帯域のパワーを、0.15〜0.40 Hzの帯域のパワーで割ります。どちらもms²なので、単位は打ち消し合います。P(f)P(f)は間隔の系列のパワースペクトル密度です。

計算例

リズムを分解する

教材用の記録から5分間

ULF
24時間分の記録が必要
VLF
3 ms²
LF
120 ms²
HF
635 ms²
トータルパワー
758 ms²
LF n.u.
15.9
HF n.u.
84.1
LF/HF
0.19
ピーク
0.250 Hz, HF

休息十分、1分あたり15回(0.250 Hz)、5分、Welch法(トレンド除去後)。 呼吸のピークはHF帯の0.250 Hzにあり、約0.1 Hzの血圧の波が、LF帯の小さなピークになっています。LF/HFは0.19です。

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教材用の記録5分間のパワースペクトルです。変動のうち、どの速さの成分がどれだけあるかを示し、Task Forceの周波数帯に色を付けています。高いピークは呼吸です。呼吸を1分あたり9回より遅くすると、ピークがHF帯からLF帯へ移るのが見えます。ドリフトありの記録でトレンド除去をオフにすると、VLF帯が埋まっていきます。

0〜0.5 Hzの周波数に対するパワーの折れ線グラフです。VLF帯(0.003〜0.04 Hz)、LF帯(0.04〜0.15 Hz)、HF帯(0.15〜0.4 Hz)に色が付き、呼吸周波数の位置に印があります。表示欄には、ULF、VLF、LF、HF、トータルパワー(ms²)、正規化単位のLFとHF、LF/HF比、ピーク周波数が表示され、何が変わったかを説明する文が続きます。操作は、1分あたり5〜20回の呼吸数スライダー、記録時間スライダー、トレンド除去のチェックボックス、WelchまたはLomb–Scargleのボタン、そして休息十分、ストレス状態、ドリフトあり、異所性拍動ありの記録を選ぶ4つのプリセットボタンです。

教材用の記録は合成データで、設計上HFが優勢です。変動のほとんどが毎分15回の呼吸による大きな揺れで、血圧の波はわずかしかありません。そのため五分間のLF/HFは120 ÷ 635 = 0.19となり、Task Forceの表の1.5〜2.0や、Nunanらが実際の記録から統合した平均2.8を、はるかに下回ります。この数値は、基準としてではなく、どう動くかを知るために読んでください。

呼吸を毎分7回まで遅くすると、呼吸のピークがHF帯域からLF帯域へ移るため、比は186.8に跳ね上がります。これほど大きな跳ね上がりは、この合成データの特徴です。呼吸が帯域を離れると、HF帯域にほとんど何も残りません。学んでほしいのは変化の向きです。プリセット「ストレス状態」、つまり速くて安定した心拍に切り替えると、LFとHFはどちらも休息時の値の何分の一かに縮みますが、比は0.66と表示され、変動がどれほど小さくなったかは何もわかりません。比は、それを作っている数値の大きさを隠してしまいます。

何で変わるか

何よりも呼吸数です。毎分9回より遅いと、比が膨らみます。ほかに、姿勢(立つと上がる)、記録時間、解析プログラムの設定、そしてLFやHFそれぞれを動かすものが影響します。Nunanらがまとめた短時間記録の値は、平均が2.8、標準偏差が2.6で、健康な人の値の散らばりの大きさがわかります。

誤解しやすい場面

単独で読むと、ほとんどの場合で誤解します。上がったからストレスがあるとは言えず、下がったから回復したとも言えません。小さな二つの数値どうしを割ると、どちらかのわずかな変化で比が大きく振れます。呼吸が遅いときは、比が測っているのは呼吸です。LFとHFの絶対値を見るか、迷走神経活動との関係がより明確なRMSSDとHFパワーを見てください。

どこで目にするか

Task Forceの名称はLF/HFです。Kubios HRVは絶対パワーから計算して出力します。Elite HRVは表示したうえで、その「バランス」の読み方には異論があるとしています。ストレスやバランスの目安に変えているアプリもあります。レッスンHRVを生む神経系のしくみで、二つの神経がどう影響し合うかを説明しています。HRVステータスが「アンバランス」とは?は、別の種類の「バランス」表示を扱います。

出典

  1. Heart rate variability: standards of measurement, physiological interpretation and clinical use Circulation (Task Force of the ESC and NASPE), 1996
  2. The LF/HF ratio does not accurately measure cardiac sympatho-vagal balance Frontiers in Physiology, 2013
  3. Low-frequency power of heart rate variability is not a measure of cardiac sympathetic tone but may be a measure of modulation of cardiac autonomic outflows by baroreflexes Experimental Physiology, 2011
  4. An overview of heart rate variability metrics and norms Frontiers in Public Health, 2017
  5. What are HRV frequency measurements (LF, HF, LF/HF) Elite HRV

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